Vol.24 2000



「式日」 (庵野秀明監督)

 庵野秀明のこの新作について語ろうとすると言葉に詰まってしまうのは、主演の藤谷文子がUAに見えたからでも、会場に向かう僕が雨に足を滑らせて左腕を強打したからでもなく、テーマがあからさまなほど最初から明示されていて、深刻そうなわりには深さに乏しく感じられ戸惑ったからだった。作品を生むモチベーションを失い故郷に戻ってきた、岩井俊二演じる「カントク」が、両親から受けたトラウマのために現実から目を逸らし廃墟のビルで暮らす「彼女」に興味を持つことで始まるこの物語は、あまりにもそのまま「新世紀エヴァンゲリオン」と通じてしまうテーマなので呆気に取られたほどだ。エンディング・テーマはCOCCOの「Raining」、そしてひたすらに観念的。映像もこれまでの庵野秀明の作品のような刺激は控えめで、山口県宇部市の風景の切り取り方は巧みなものの、初めて「ラブ&ポップ」を観た後に感じたような爽快さはない。「彼女」が暮らす現実離れした部屋や、アニメーションも取り入れながらの心理描写には、庵野秀明としてはこれまでになくイメージと表現との距離が近い印象を受け、そこに食い足りなさを感じた。その代わり庵野秀明の個性が出ているのは、「カントク」が「彼女」との生活に飽きはじめ、それを読み取った「彼女」が荒れはじめるという、生々しさを感じさせる非観念的な終盤の展開においてだ。上映後のティーチ・インで、クライマックスを含めた少なからぬ部分の台本は白紙のまま撮影したと庵野秀明は語っていたが、今回はそうした創作方法が結果的に煮え切らぬものを残していた。一度観ただけで即断するのは危険だが、過渡期的な印象を残す作品なのは確か。前衛映画のような雰囲気は、非商業的ゆえ東京都写真美術館での公開には向いているとは思うのだが。
(DC/18/00)