Vol.5 1998



鶴見済判決公判雑惑
 毎日3大紙を読んで、ネット上を徘徊していても、肝心なことを知ることができなかったりするものらしい。当然といえば当然なのだが。そんなことを改めて思い知らせてくれたは、4月28日付読売新聞の鶴見済初公判の記事だった。彼が逮捕されていたなんて、全く知らなかった。

 記事によれば彼が逮捕されたのは今年2月、高田馬場の路上で覚醒剤とLSDを所持していたためだそうだ。鶴見済は起訴事実を全面的に認め、検察側は懲役1年6ヶ月を求刑したとのこと。それにしてもこの記事、朝日にも毎日にも載ってなくて、慌ててニフティーサーブの新聞データーベースで逮捕の記事を検索したのだが、全く出てこなかった。僕の探し方が悪かったのかもしれないが、世間の彼に対する興味なんてこんなものなのかもしれない。

 そんなわけで、久しぶりに本棚から鶴見済の著書「無気力製造工場」を取り出してみた。思い起こせば3年前、会社の新人研修のクソつまらない毎日に、表現しようもない鬱屈した気持ちになっていた僕が手にしたのがこの本だった。いろいろ書いてあって面白そうだな…なんて軽い気持ちで500円の古本を買ったのだが、読み始めたら止まらなくなってしまったことをよく覚えている。急激に閉塞感を増した生活の中で、なんとか我慢しようと無理をしていた僕にとって、「社会について語るなんてくだらない」「ダメな人間はしょせんはダメだ」「デカい一発なんて何も起こらない、未来はドブだ」といった内容の荒っぽい言葉の数々は異常なインパクトを持っていた。「完全自殺マニュアル」も「人格改造マニュアル」も、非常に完成度の高い本だと思うが、やはり出会いの一発であるこの「無気力製造工場」は強烈だった。今読みかえしても充分面白いし、なにより鶴見節とでもいうべきふてくされた態度が一貫しているのが素晴らしい。実のところ、自分で文章を書けたらいいなぁなんて思い出したのもこの本を読んだせいで、この「o u t d e x」をはじめとするページ群を僕が濫作している遠因は、この本にあったりもする。

 彼は「人格改造マニュアル」で覚醒剤を思いっきり賛美していたし、最近も「Quick Japan」の連載で海外でのドラッグ体験を書いていたので、初犯だとはいえ、これじゃ実刑は免れないかもしれない気がした。退屈な毎日を腹の底から嫌悪している彼が刑務所の中に入ることになったら、同じ事の繰り返しの毎日に絶えられるのだろうか? 銃刀法違反で懲役刑を食らったマンガ家・花輪和一が「アックス」で描いている刑務所体験記マンガを読みながら、そんな心配までしてしまった。

 結局、5月6日に東京高裁で開かれた鶴見済の判決公判では、懲役1年6ヶ月・執行猶予3年という判決が出たそうだ。覚醒剤の売人に自分から電話したりもしていたそうだが、それでも執行猶予がつくものなのかと、法に疎い僕としては少々驚いた。もちろん彼には、社会に悪態をつくような文章を娑婆で書き散らして欲しいんだけど。特に今回の逮捕劇という非日常的な事件をネタにしてね。

(MAY/27/98)