Vol.3 1998



「ラブ&ポップ」 (庵野秀明監督)
 始まってすぐ、むやみに凝った撮影手法の連発に「ここまでやるか」と笑ってしまった。普通なら素人くさいと考えてやめてしまいそうなアイデアも全開。極端な構図の連続で、なにも皿や鍋まで透明にして下から取らなくてもいいだろうってぐらいだ。さらに、いくつもの映像が重なられたり、マンガの縦コマのように切り取られたりという手法も駆使されていたが、そんな映像感覚もそのうち心地よくなってしまった。僕は見てて飽きなかったけど、「キネマ旬報」とか買って読んでるような映画ファンにはどう評価されるんだろ?

 また、僕を含めた多くの人々が関心を寄せていたのがエヴァとの連続性。冒頭のシーンからしてもろにエヴァだったし、ラストの自問自答といい、エヴァとの連続性ははっきりとうかがえた。オープニングに関しては、まぁ一種の罠なんだろうけど。それでも人間の関係性という問題に収斂していったテーマは、隠すそぶりも無いほどエヴァ的で、逆に驚かされてしまったぐらい。しかし視点を変えれば、それは庵野監督の内面世界を見事に物語っていた証拠でもあるのだろう。

 ただ、テーマの面では、旧態とした倫理観で援助交際に結論を出してる印象も否めなかった。もちろんこれは村上龍の原作に沿った結果なのだろうけれど。あまりに美しいまとめ方は、エヴァでひたすらに繰り返された「終わりなき逡巡」に心酔した人々にとっては、やや不満を残すものだったろう。竹熊健太郎が「Quick Japan」で表明していた不満とは、おそらくこの点についてではないだろうか。たしかに宮台真司の本を読んだことのある人間には、現代社会への洞察という点では物足りなさを残すだろうが、あの作品で描かれた世界もまたひとつの真実だろう。「ラブ&ポップ」は、現代社会ではなく、あくまで個人の心理を見据えた作品なのだから。

 全体としては、予想以上に「映画」としてまとまっていた。演出も、見る人が見れば一発で分かる庵野監督のお得意技が炸裂だ。役者もそれぞれいい味を出していて、特に手塚とおるの怪演は見もの。ミーハーな話で恐縮だが、昔たまたま見た「中学生日記」の特番で主演を務めていた工藤浩乃はやはり可愛かった。そして僕が毎日見ている渋谷の風景が、汚いものは汚いまま、鮮やかに切り取られているのもちょっとした感動だった。

 エンディング・ロール最後のギャグははずし気味だったけど、庵野監督のあの図太さはなかなか爽快。帰り道でふと気付くと、主題歌「あの素晴らしい愛をもう一度」を口ずさんでいたのだった。

(JAN/16/98)