![]() ETC. Vol.2 |
| 水耕栽培日誌 '94-'97 〜カーネーション全アルバム制覇への長い道のり |
94年4月2日(土) 新宿ヴァージンメガストアで、THE SUZUKIのトーク&サイン会。「THE SUZUKI meets GREAT SKIFFLE AUTREY」を買えばサインがもらえると思っていたのだが、会場に行ってビックリ、オムニバスの「WOODSTOCK BREEDERS」も一緒に買わないと駄目なのだ。後者を買う気はなかったものの、サイン欲しさに2枚とも購入。マニアの受難。
5月5日(木)
95年1月6日(金)
96年7月22日(月)
8月31日(土) その「GIRL FRIEND ARMY」、なんでこんないい曲ばっかなんだ。ピンと来なかった「Young Wise Men」に比べて、別のバンドのようにスケールがでかい。懐が深い。一聴して気に入って、そのままCDプレイヤーにのりっぱなしだ。
9月7日(土) 僕の目の前には、ベースの太田譲が。なんか、演奏しながら自分の世界に入ってる人で、こちらも思わず目が離せなくなってしまった。 「GIRL FRIEND ARMY」の曲中心で、ラストはなんと島倉千代子の「愛のさざなみ」!個人的に好きだった曲を、いきなり気が触れたようにノリまくって演奏され、「カーネーションあなどり難し」の思いを強くする。 僕の想像を超えるほどディープなカーネーション・マニアのTいわく、「ほんとメジャーになったよ」。
10月23日(水)
鈴木博文と組んだ政風会のテイストは予想通りだったが、デヴュー当時のカーネーションがこんなにナイーヴだったとは。現在のカーネーションとも、「Young Wise Men」の頃のカーネーションともまるで別のバンドみたいで驚く。 それにしても、政風会のショットで、博文氏の隣にいる太ぶちメガネの男は一体誰なんだろう。どう見ても先日のミニライブで見た筋肉質男の直枝とは別人だ。俺は騙されないぞ。
10月19日(土)
早速聴いてみると…なんだこの音は!この屈折に満ちた退廃した世界は!なんで岡林信康や島倉千代子のカバーが入ってるんだ!てな驚きの連続で、もう最高だ。「GIRL FRIEND ARMY」の肉体感に溢れたサウンドよりも、こっちの方がずっと好みだ。もっともこれじゃ売れないだろうけどなぁ。なんでこんな佳作が、もっとしっかり評価されなかったんだろう。こういう音楽を「箱庭ポップス」とかいう紋切り型の表現で片付けてしまった音楽ジャーナリズムの未熟さも、彼らのこれまでの苦難の原因のひとつなんだろう。そして、そんな音楽ジャーナリズムの欠陥に気付かなかった僕のような聞き手にも責任はある。 なにせ、今までカーネーションを本気で聴いていなかったことを後悔しまくっているのだ。床の上転げまわりたい気分だよ。
97年5月25日(日) そして実は、太田譲が元グランドファーザーズだったことを、ここで初めて僕は知ったのだった。ああ、石を投げないで〜。
6月10日(火) で、この「エレキング」、屈折を漂わせながら躍動感もあって、世捨て人になる前のXTCのようだ。 「GIRL FRIEND ARMY」の発売当時、読売新聞に載ったインタビューで、「極度にマニアックな音楽性で聞き手を限定しすぎていた」というようなことを直枝が語っていたけれど、本当にそうなのかなぁ?このアルバムなんて、「テレフォン・ガール」をはじめとして、キャッチーな曲が目白押しじゃないか。マニアックさとキャッチーさの両立なんて、そうそうできる技じゃないはず。しかも森高千里まで参加してるし、話題性も充分だったんだから、セールスの失敗はプロモーションの問題と考えるのが妥当だろう。(「天国と地獄」は確かにマニアックだけどね。)この時代の音楽性を否定するような発言は淋しいなぁ。 なにはともあれ、「エレキング」は、毎朝の目覚めの1枚になってしまった。
6月13日(金) しかし、一聴した正直な印象は「あれ?」ってな感じ。いまいちひっかかりが無いまま終わってしまうのだ。「エレキング」を聴きまくった後だからかもしれないが、急に毒が消えてしまったような淋しさを感じる。特に、この健全極まりないサウンドは…。「GIRL FRIEND ARMY」だとOKなんだけど、この違いはどこから来るものなんだろう?単に僕が、健康的な音が苦手なだけかもしれないけど。
6月20日(金)
6月30日(月) 一番好きな「天国と地獄」と一番ピンと来ない「a Beatiful Day」の狭間の本作、聴いてみると結構いい。音の重心が低くて好みだ。1曲目のタイトル曲なんて、ラップっぽくて驚いてしまった。(ただし、ラップといってもヒップ・ホップのそれというより、ビブラストーンのそれという印象だけど。)前作の混沌を引き継ぎながら、男臭さ度は上昇、そしてソウルっぽい新機軸って感じか。 このアルバムから方向性が変わったと言われていたけれど、「天国と地獄」と聴き比べる限り、そんなに違和感無いなぁ。確かに「エレキング」とはギャップが大きいけど。この頃、インタビューで直枝が「今までのファンはみんな離れてくでしょうね」と話していた記憶があるけれど、ホントにそうだったのかな?
てなわけで、時間軸を無視してカーネーションを聴き漁ってみた。 一通り聴いてみると、カーネーションってのは、サウンドの表層的なスタイルがアルバムごとに変化しているバンドだ。それぞれのアルバムでクオリティーの高い ものを目指して、そしてそれがある程度の完成を見せると、新たな展開を目指して再び過渡期に突入する。さながら賽の河原で石を積んでは崩しているようだ。 そんな彼らは、音楽的にはいわば「根なし草」と言えるだろう。音楽への強い愛情と膨大な音楽知識の一方で、音楽的アイデンティティーが無いというジレンマ。でもそれって、日本のマニアックなバンド、というかマニアによるバンドの宿命だよね。直枝は「MUSIC MAGAZINE」でもライターやってたぐらいだし。 実際、「エレキング」と「GIRL FRIEND ARMY」では、そのアルバムとしての性格はかなり違う。それでも僕が両方とも大好きなのは、そうしたジレンマと格闘する彼らの求道者精神に対して、僕自身がシンパシーをもって聴いているからかも知れない。 「エレキング」や「天国と地獄」で屈折ポップスを一度極めた彼らが、その方向を敢えて捨ててまでやっている現在の路線、もっともっと突き抜けた音を聴かせてくれることを内心期待している次第なのです。
![]() それにしても、政風会の太ぶちメガネ男は誰なんだ。
(JAN/20/98)
(この文章は、カーネーションのファンジン『JUNK MOBILE featuring CARNATION』に寄稿したものです。) |