
栗コーダーカルテット インタビュー

○さる2月22日、横浜ヴァージンメガストアで栗コーダカルテットのミニライブが行われました。店内のちょっとしたスペースがステージ代わりということもあってか、楽器を持って登場した栗Qは、「ちょいと演奏でもしますかぁ」ってな自然な感じで演奏をスタート。「普段はミスチルって名乗ってます」などという冗談も飛ばし、「次何やろうか?」とその場で相談しながら、リラックスしたムードで10曲ほどを演奏。間近で生の栗Qのリコーダーの音色を楽しめる、なかなか素敵なイベントでした。いいですねぇ、木管の音色って。
○そしてイベント終了後、、栗Qの皆さんにお話をうかがう機会をいただきました。場所は、横浜ということで中華料理屋。お忙しい中、僕の要領を得ない質問にも真面目に付き合ってくださった栗Q&栗Q財団の皆さんに、心より感謝いたします!
−今日は相談しながら演奏する曲を決めてましたけど、事前にまったく曲順を決めずにやってらしたんですか。
川口:今日はフランクな主義で。
栗原:今日は雰囲気がわからないんで、決めずにやってみようと思って。
−ヨーロッパツアーの方はどうなったんですか?
栗原:いまだに希望中ということで(笑)そのままですね。
−関島さんはインドはいかがでした?
関島:とりあえず…象に乗りました。タジマハールを見て…毎日カレーを食べてました。象ってね、触ると暖かいんだよ、気づかなかったよ。
「蛙のガリアルド」命名の由来は?
−アルバムタイトルの「蛙のガリアルド」って、どういう意味なんでしょうか。
栗原:「今こそ別れ」っていう曲があって、僕たちが最初に合奏した曲なんだよね。もともと歌がなくて、いろんな風にアレンジされたものが昔出版さたらしくて、メロディーは同じなんだけどリュート用に編曲されたもので、「蛙のガリアルド」っていうタイトルが付いたものもあって。そこから「同曲異名」みたいな、その(名前の)曲はアルバムに入れてないけど、元になった曲は入っている。そういう感じなんですよ。
川口:「ガリアルド」っていう名前の蛙のことかと思ってました?
−ガリアルドって舞曲のことだから、それがなんで蛙なんだろう?って思ってました。
栗原:「デンマーク王のガリアルド」、「なんとか貴婦人のガリアルド」というような曲もいっぱいあるみたいで、そん中の一つですよね。で、知らないひとには「ガリアルド」って蛙がいるみたいだし、蛙かわいいし、そういう気持ちを込めて付けたんじゃないかと思いますよ。メジャー感がありますでしょ(笑)。
録音大好き
−選曲はどう決めたんですか。
栗原:選曲は…。
近藤:みんなで持ちよって、「こういう曲はどうですか」って。
栗原:最終決定はみんなでしてるね。
−レコーディングもほのぼのとした感じだったんですか。
川口:レコーディングはさっき(料理の)メニューを選んだ時のような感じで。(注:メニュー決定は話し合いのもと、極めて効率よく行われました)
栗原:演奏してる時間はすごく少なかった。演奏やってない時間がすごく長かった。
川口:試行錯誤してた。
関島:機材と格闘したりね(笑)。
栗原:普通のポップス作るのとは違うから、どういう形が良いか方法を考えてたね。たとえば、いっぺんに録る録らないとか。
近藤:「せーの」でやるか、1本1本重ねていくかで…。
栗原:悩んだ!悩んで全然取り方が決まらない曲とかありましたわ。
−結局はどういう形に?
栗原:それは曲によってすべて違う感じに。全員で一緒にやった曲と、一人ずつ分けた曲と。
川口:何人か一緒で、一人だけはずしたり。
近藤:そこがいちばん特徴だよね。普通のクリック(注:テンポを示す演奏用のガイド音のことで、通常はリズムボックスのカウベルやリムショットなどの音を一定のテンポで別のトラックに入れておいて、それを聴きながら演奏する)だと雰囲気が出ないってんで、みんなで演奏して、それを聞きながらまた一人一人、清書みたいに演奏していったっていう。
栗原:僕たちは録音が相当好きですよ。
川口:録音してる時が楽しい。
栗原:テイクを選んだりを、一人で全部やってくとバランスの悪いものになって違ったものになってくんじゃないかと思うんですが、全員で誰かが欠落してる所をフォローすることが多いから、トータル的にはいい感じのアルバムが上手に作れたなと思う。僕なんか、完成度が高くないと嫌な方なんだけども、皆がいいって言うから一歩手前で我慢したりとか、そういうこともあったな(笑)。あと、エンジニアとか頼んでないから、音が悪いのは自分達の責任になるんだけど、そういうことも含めて楽しめた気がする。
−録音は栗原さんの所が中心だったんですか。
栗原:そうですね、8割。残りが湾岸スタジオ(注:鈴木博文氏の個人スタジオにして、メトロトロン・レーベルの牙城)。最初に湾岸で録り始めたんだけど、合う曲とそうじゃない曲があったもので。音の鳴り方と、録り方のシステムなどの違いですね。
近藤:湾岸で録ってから、レコーディング一時中断して再開するまで半年ぐらいあったよね。
栗原:最初に5日間連続でやってから、半年以上何も進まなかった。
近藤:おととしの11月ぐらいに湾岸で始めて、再開したのっていつだっけ?
栗原:6月とか7月ぐらいじゃない?そのあいだに「ジャム」(注:栗Qが音楽を担当したNHKの人形アニメ「Jam The Housnail」)を5月に2日間で録ったんだよ。
栗Qミーツ湾岸キング
−スタジオのレコーディングの場には(鈴木)博文さん(注:ムーンラーダーズのメンバーにして、「蛙のガリアルド」の共同プロデューサー)はずっといたんですか?
栗原:ううん。湾岸スタジオの時だけ。
−どんな指示が出るんですか?
栗原:「いいね、今のも良かったけど、前のも良かった」。で、ひたすらテープを回してくれるんだよね。
近藤:音楽的なサジェスチョンみたいのはなかったよね。
栗原:覚えてるのはね、途中経過をラフミックスで持っていった時に、リバーブこれくらいの量になるのかな?とか、後半にもうちょっと重量がある曲があるといいなぁ、とか、その2つしか覚えてないんですよね。しかもそれは僕らも思ったことだったから。
近藤:あとは場を和ませてくれる。
関島:交番に付いてきてくれたりね(笑)。(注:録音中に栗原さんと近藤さんが、駐車違反でしょっぴかれたとか)
近藤:あとお弁当買いに行ってくれたり(笑)。環七まで。
−メトロトロンから出るのって意外かなという気もしたんですが。どっちかというと、メタカンパニーのオフノート(ワールドミュージック系独立レーベル、関島さんのSTRADAもここから発売)辺りから…。
川口:それはないでしょー。
関島:出るならトラットリア辺りから(笑)。
−メトロトロンのほかのCDって聞きますか?
栗原:俺はダリエちゃん(濱田理恵)くらいかな。
川口:同じスタジオに入ってる時はね(笑)。
関島:自分が参加したのは持ってますけどね。
川口:メトロトロンに限らず、あんまりほかの邦楽そんなに聴かない人が多いんだけど、その中の比重からすると、メトロトロンってまだ聴いてるんじゃないかな。
栗原:でも川口くんと近藤くんは音楽知ってる方だよね。僕が音楽一番知らないんですよ。
関島:いや僕でしょう。CD買わないからなぁ。
栗コーダーカルテット結成秘話
−そもそもなんで皆さんでリコーダーを吹こうということになったんでしょうか。
関島:主観的に僕がまとめて話してみましょうか(笑)。「写真にチュ〜」(注:ハイポジのミニアルバム)を録った90年に僕と近藤くんが会って、その後なんとなくハイポジを手伝ってたりして、92年に「コメポップ」っていう商品のCMで、栗原さんがハイポジっていうバンドのもりばやしみほを起用してみようと…。
栗原:起用というか、ハイポジでデモテープ作ってって発注されたみたいなんだけど、秒数計算がしんりんちゃんできなくて、途中で歌うだけならできるってことになったんだよ。
近藤:それは初耳だ。
栗原:俺の情報だとね。ホント裏に何かが画策されてたのかもしれないけど、マフィアとかがさ(笑)。
関島:そんで、ハイポジを中心に、こっちに関島、こっちに栗原っていう線ができてたとこで、92年の12月のライブで、2人が呼ばれた時があって、その時なぜか2人ともリコーダーを…。
栗原:持って?
関島:持ってたんじゃなくて、「かなしいことなんかじゃない」でリコーダを吹くことになって、なんとなく2人の出会いがリコーダーになったんだよね。
栗原:そうそう。
関島:で、93年に入るやいなや、ハイポジのベーシストに栗原さんが抜擢されて。そして93年の6月くらいから川口くんが、サックスで参加。
近藤:栗原くんが入った1回後のライブから川口くんが入った。
川口:なんだ、じゃあそんなに先輩じゃないん(笑)。
関島:2回後じゃない?次の時は菊地(成孔)さんで。
栗原:駒沢(裕城)さんもいたと思うよ。
近藤:あったかもしれない。
関島:で、4人揃った。なんとなくその頃、リコーダーが僕らの中でマイブームになってて…。
栗原:それまでリコーダーで関島さんとやったりした時に、僕すごいショックだったことがひとつあって。
関島:バロック式とジャーマン式?
栗原:それはまだいいんですよ、それまで僕の中ではリコーダーは、 CかFかGくらいのキーくらいしか演奏できないと思ってた。それがハイポジの曲でキーがBだかF#だかの曲があって…。
近藤:「僕の言葉に訳せない」?
栗原:それだ!それで、キーがBかF#なんですね。で、オブリガートのフレーズが譜面に書いてあって、「これはリコーダーじゃ駄目でしょ」って僕が言うと、関島さんが普通に吹いてるから(笑)、「わーっ!」とか思って。あれやったのは…?
近藤:93年に勢力的に2ヶ月に1回とかライブやってて、ちょこちょこっと曲のヴァリエーションひとつとしてリコーダーを使ったりとかして。
関島:栗原さんがプラスチックのバスリコーダーをその頃買って、「僕でありたい」のライブアレンジにリコーダーヴァージョンを採用したんですよ。94年の「カバのオツム」で「僕でありたい」をレコーディングしたんですよ、リコーダーアンサンブルで。で、それと話が前後するんだけど、栗原さんはその頃自分のユニットみたいものをやってなくて、自分でアレンジした物を発表する場として、なんとなく「栗・エヴァンス・オーケストラ」ってのを作ろうって話ししてて。
栗原:あー!あった、あった(笑)。なかったけどあった。
関島:94年に「僕でありたい」を録音した頃から、まずはリコーダーから始めてみようかなぁなんてことを言っていたその時に、94年の4月の頭ぐらいの梅津和時さんの「大仕事」っていうライブを毎年やってて、そこにさねよしさんと知久くんが出てて、僕がそのバックに加わってた時があって、その時川口くんと栗原さんが聴きに来てて、でみんなで打ち上げに行った席で、知久くんの今度のライブの話をちょっとしていた時に、「リコーダーカルテットで伴奏したらどうだ」ってことにその場でたどり着いて。
栗原:そうだ、そうだ、知久君が元々笛が好きだった。
関島:それでこの4人でやろうということになったわけですよ。
衝撃!!近藤さん起用の真実
栗原:最初そん時にリコーダー吹ける人がいたんだけど、一回俺が電話をしたんだけど留守電だったから、関島さんに「どうしましょうかねー?」って言ったら、「近藤くんはどうですか?」「おーそれだ!!」(笑)。そしたら(近藤さんが)やるって言うから(笑)。
川口:そうだったんだ、じゃあその人はチャンスを逃したんだぁ(笑)。
近藤:留守電じゃなかったら、俺じゃなかったの(笑)?
−それはすごい話ですねぇ。
近藤:それは今日一番の…(笑)
川口:その人、人生のチャンス棒に振ったんだー(笑)
栗原:でもその人がやるって言ってたら、全然集まれなかったりとか、続かなかったんじゃないかなぁ。関島さんの発想があの時スゴイと思ったのは、近藤くんがリコーダーを吹いてるところを見たこと無いのに、近藤くんの習性から(笑)
川口:そっち側から責めた所がスゴイよね。「笛を吹く人」ってところから責めるんじゃなくて。
関島:ライヴで吹いてませんでしたっけ、近藤さん?
近藤:僕が吹いたことあるのはデモテープで…。
関島:あっそうか、「研ちゃんバンド」のデモテープで笛吹いてたんだもんね。あれが頭にあったのか。
川口:「研ちゃんバンド」を合流させちゃったんだよね。
栗原:あるある!!
近藤:ハイポジの前座でねぇ、しんりんちゃん抜きでそれ以外のハイポジをサポートしてくれてたメンバーで、インストの曲とかちょっと幕間みたいな感じでやってて、それを「研ちゃんバンド」とか言ってて適当にお茶濁しみたいな感じで、93年にライヴハウスで精力的にやってた時に何回かやって。
関島:その時に既に「写真の中の君」やってたもんね。
近藤:やってた。
栗原:俺練習したもん。「キーがシャープが2個か難しいなぁ」とかなんとかそんな。
近藤:そこでリコーダーが割とメロとったりとかね。
栗原:そんで俺はそん時は書いたことしか吹けなかったんだけど、関島さんがGマイナー→C→Fなんてコードに乗せて適当に何かやってるのを聞いて、「わーっ!」とか思った(笑)。
川口:あれショックだよねぇ。
栗原:ショックショック。
川口:俺も半音階できるようになるとは思わなかったもん。
近藤:俺の印象では、関島さんがそのもっと前にハイポジのライヴのサポートとかしてくれて、篠田さん(注:篠田正巳氏・JAGATARAやコンポステラで活躍したサックス奏者。92年に逝去)とかとセッションしてる時も、たまに曲によって、いきなりチューバからソプラニーノに持ち替えて、「Fool's Paradaise」とかで笛吹いたりしてて、関島さんに「なんでこれなんですか?」って聞いた覚えがあるんだけど。「チューバは一番でっかいから、一番ちっちゃいのがいいかなーと思って」って言われて。ああ、それでソプラニーノ吹いてるのか…と思って。
栗原:そうだ。あとあれ、音がすぐ出るからね。音がすぐに出る楽器を好きになってしまったので良かったですよ。これクラ(クラリネット)だったらねぇ。
次作はクリスマスアルバム!?
−栗Qの皆さんはそれぞれに活動されてるわけですけど、今後はどのぐらいの感じで活動してくんですか。
栗原:スケジュールが合う範囲で、そこそこ。あんまりこれに命を懸けてしまうと、「懸けてしまう感」が出てよくないんじゃないかと思います。メジャーから話が来ても考えちゃいますね。…というのは冗談ですけど(笑)、ほどほどのペースがいいと思います。
−機が熟した頃にまたという感じですか?
川口:機が熟したらどうこうとは、違う感じかな。
栗原:CDはまたライブとは別な流れで作ってる感じがあると思うな。たまたまライブでやってた曲を録ってたけど、この間のアルバムの場合は。全然興味の対象が違う感じでやってんのかしら、あんまり深く考えたこと無かったけど。
−今回のアルバムは全部インストですけど、今後ボーカル入りの曲を録音する予定はないんですか?
関島:僕らが歌う?(笑)
−いやゲストでも(笑)。
川口:今回は最初の定義でまず4人だけで作ろうってのがあって、必然的に次作でそういうことの可能性はありますよね。
関島:最初博文さんの頭の中にそういうゲストボーカル入りっていうのはちらっとあった。
栗原:一番最初ですね。
−それはどんな人が。
関島:知久くんとかさねよしさんとか。
栗原:ありましたねー、ためになるなぁ。そんなことありました。
−メンバーがボーカルとるとしたら、誰になるんでしょう?
栗原:僕たちはとらないでしょう、たぶん。僕の中ではおつきあいしてる歌う人達がみんな強力だからそんな気持ちは起きないな。皆凄いから。足りないものがあればアレだけど。
近藤:次は皆一曲ずつ歌う予定です(笑)。
栗原:ゴスペル系が得意だからアカペラにも(笑)。こういう大物っぽい答え方もいいかな(笑)
−質問をはぐらかすっていう(笑)。
川口:次作は4人だけっていうこだわりは全く無くて、結構自由にやるんじゃないかという予想はありますけどね。
栗原:ありますねー。前からねー、クリスマスアルバムは作りたいって思ってて、1作目を作る前から作りたかった。
関島:ファーストがクリスマスアルバムっていうのもなかなかよかったかもね(笑)。
−今年の冬には作らないんですか?
栗原:作りたいんだけど、考え中って感じですね。
関島:冬に作ったんじゃ間に合わないんだ、クリスマスアルバムって。
一同:そこが問題なんだよねー。
栗原:季節感は大事にしたいわけだから。
川口:冬に録音しといて、次の冬に出すという優雅な作りをできればね(笑)。
栗原:その1年間のうちに、出したくなくなっちゃったらやだからねぇ。そこのジレンマはありますねぇ。
栗Q「さらりと道」を進む
−今日のミニライブ見てたら、リコーダーを持って登場して、なんかさらりと始まってましたよね、すごく自然体で。
近藤:今日は「さらりと感」がすごい(笑)。
栗原:すげーさらりと感あったねー(笑)。さらりと感でさぁ(笑)。
近藤:ホントはクアトロもさらりと感を出したかった(笑)。やっぱかしこまってしまった(笑)。
栗原:かしこまったなー。ホントはね、こんなに活動が続いておまけにCDとか出すつもりじゃなかったから、4人で知久くんの伴奏やろうって決まって、94年の7月の15日でそれ1回で終わるかなと思ってたんだ。でもそん時にね、近藤くんが言い出したんだっけ、「(近藤さんの口真似で)やぁ、どうせだったらライヴとかいれたらいいんじゃない」とか言って。なんか周りに運ばれてる感じで。ありがたいことですわ。


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