
さねよしいさ子 ライヴ リポート
97年5月11日 青山こどもの城 円形劇場
by ムネカタ

−MUSICIANS−
musicians:
鳩野信二−piano and others
濱田理恵−accordion and others
関島岳郎−Tuba and others
ゲスト:
ハイポジ
音楽監督:
栗原正己−Recorders(high),Mellophone and others
僕の中でさねよしいさ子という人が気になり出したのはつい最近、1月の栗Qのライヴにゲスト出演した彼女を見てからでした。なんとも不思議なキャラの人というぐらいのイメージだったのが、いざ歌い出すとその声量の大きさ、表現力の見事さ。ライブの後すぐに彼女のベスト盤「スタイル・ブック」を買ってしまいました。もちろんこのCDも良かったけれども、僕はやはり目の前で踊るように歌う彼女の姿が忘れられず、そしてそこへ来た情報が「ハイポジさねよしライヴにゲスト出演」。人生たまにはいいことあるじゃん。
会場のこどもの城円形劇場ってのがまた、その名の通り円形で、しかも客席は5列のみ。なんて贅沢な。
「遅れてごめんなさいね〜」と、遅刻してきた(らしい)彼女が登場、20分遅れでライヴはスタート。
ちょっと驚いたのが、演奏者は「さねよしバンド」の鳩野信二さん、栗Qでおなじみ関島岳郎さん、湾岸女王の濱田理恵さんの実に3人のみ。しかし、ヘタをするとスカスカの音になりかねないこの編成が、見事にさねよしさんの歌を引き立ててました。
まず、スタンダード・ナンバー「マイ・フェイバリット・シング」で彼女の表現力の凄さに驚愕。本当にスゴい。歌唱技術のみで彼女を評価するべきじゃないけれど、それにしても素晴らしい。
実は、3月23日の「栗Qストアイベント2連発」の際、タワーレコードで客席にさねよしさんを見かけたんです。栗Qライヴでの印象からすると意外なほど小柄で、ステージで歌う時の彼女の存在感の大きさを改めて実感してしまいました。そして今日もまた。
そして、「天使のほほえみ」では、すれっからしの僕ですら心震えるものが…。
「天使のほほえみに触れると泣けてくるよ」
僕は、さねよしさんの歌声を聴くと泣けてくるよ〜。なんて想いが純化されて結露した「うた」なんだろう。1月の栗Qライヴの際、彼女との出会いの1曲がこの曲であった幸運に感謝。
途中でプレゼントの抽選会。しかも、栗原さんや関島さんがこのための曲を書き下ろすという凝りよう(笑)。曲の各音程に、ブロック番号や座席番号を対応させて演奏し、さねよしさんが「ストップ!」と言うと自動的に当選者が決定される…という極めて合理的(なはずなのに面倒くさい)システムで、会場を和ませてました。
その後、濱田理恵さんの曲「二月生まれ」をさねよしさんと濱田さんの2人で歌うという場面も。もうこの時点で、濱田さんの甘い歌声に僕の頭はメルトダウン状態…。
ゲストのハイポジが登場する前に、しんりんちゃんの書く詩を文学として評価しているというさねよしさんが、「バースディパーティ〜いっぱいだ」「ナミダハ ボーリョク」「ママになっちゃダメ」の3編を朗読。「ナミダハ ボーリョク」なんてそれこそ「ボーリョク」な感じで、鬼気迫ってました。その恐さったら、
しんりんちゃんが登場して開口一番、「こわいよ〜」と言ったほどです(笑)。
で、ハイポジはまず「最高の前戯」を演奏。
「私はもりばやしんのささやくような声を聞いていると、エッチな気分になってしまうんですが…」
とさねよしさんが言うと、
「私、前から不思議だったんだけど、いさ子ちゃんてエッチな気分になるの?」
「ええっ、…私エッチな気分になるの好きですよ」
この時点でやめときゃいいのに、しんりんちゃん、さらに突っ込むんです(泣)。
「私ね、いさ子ちゃんと何が違うか考えたんだけど、セックスが違うの」
「そ、そうなの?」
「日本の音楽界にいる女の人って、みんな売春臭さがあるんだけど、いさ子ちゃんにはそれがないの」
…てな具合に、さねよしさんの客層も省みずにしんりん節をブチかましです(笑)。さすがです。誰も勝てません。この後さらに「売春の起源」にまで話は展開しました…。観客の皆さん、リアクションに困ってた気がします(笑)。
次の曲「僕でありたい」は、さねよしさんの編曲。この曲以降は、ハイポジの側の希望でさねよしさんがリードボーカルで、しんりんちゃんと濱田さんがコーラスやボーカルを取るという形で歌われました。そして、この3人の歌声が重なる瞬間の至福!それぞれ声質が違うようで、すごく相性がいいんです。盗録しとけばよかったー!(ウソです、スイマセン。)
続く「あと何日」の演奏後、しんりんちゃんが
「なんかしんみりしてるよー」
と言うと、さねよしさんが、
「た、楽しくする?」
「わたしたち30過ぎてるんだよ〜(笑)」
「ど、どうすればいい?」
と噛み合ってるんだか合ってないんだか分からない会話。でも仲が良さそうなんですよねぇ。
「いさ子ちゃんのためにあるような曲」としんりんちゃんが語った「かなしいことなんかじゃない」は、ハイポジのレコーディング時にしんりんちゃんが歌うと、どうしても暗くなって、近藤さんが嫌がったとか。ハイポジが最後に共演したこの曲では、音楽監督の栗原さんも登場し、しんりんちゃんはパーカッションを担当。
さねよしさんの世界と共鳴するハイポジの曲を、さねよしさんが歌う…というこの企画、単に「ゲストで歌って終わり」で済ませるのではなく、それぞれのアーティストの魅力を相互作用のように引き出していて、なかなか素敵でした。
そして、終盤の3曲を聴き終えるころには、僕の頭は「さねよしいさ子」で充満している状態に。彼女独特のフォークロア(?)「鳥のうた」は、彼女の表現力とあいまってそのスケールが圧巻。まいりました。ホレました。
アンコールではハイポジや栗原さんを含む全員が登場。2回目のアンコールでは、さねよしさんが1人でアカペラ。実に2時間半に及ぶライヴでした。
今回初めてさねよしさんを生でちゃんと見て、今まで彼女を誤解していたことへの自省を込めて、特に印象に残ったことが2点あります。
ひとつは、彼女は一見(一聴?)非現実的な歌をうたう夢想系の歌手のようだけれど、むしろ自分のコアな部分をむき出しで表現する、ある意味で「直球型」のアーティストであるということです。彼女のデヴュー作のタイトル曲「風や空のことばかり」が、自己と他者との軋轢から生まれた「痛みの歌」であるように。その点で、しんりんちゃんと共通するものがかなりあるのでは?僕は正直、表現者としての彼女のテンションに、かなりショックを受けました。
そしてもうひとつは、彼女の歌の世界はおおらかで緩やかに見えながら、実は物凄い緊張感を生み出しているということ。「鳥のうた」1曲からでもそれは感じてもらえると思います。これほど強烈な世界を構築できるアーティストなんです。
彼女の歌の世界を甘く見てると大火傷ですよ、彼女の「なにか」とシンクロ率の高い人ほど。ここにその実例が1人(笑)。
付け加えるなら、きっと彼女は自分と周囲との軋轢の中で、自分を表現するのにものすごい苦しみを抱え込んでるんじゃないでしょうか。時々しどろもどろになりながらも、周囲に気を使ったり、自分の想いを言葉にしようとする彼女の姿を見てそう感じました。途中「1・2ヶ月前まで生きてるのがつまらないって感じてて…」というような話や、「私もCD一杯出せるようになりたいなぁ…」というような話もしていて(現在彼女はメジャーとの契約がない)、なおさら愛しくなっちゃってんですねー、照れちゃうけど。過剰な自分の思い込みを対象にぶつけるのが愚の骨頂なのは百も承知の上で、そう思わずにいられないんです。
もう、ハイポジのリポートなのか、さねよしさんのリポートなのか分からなくなってしまいましたが、そのぐらいさねよしさんに衝撃受けちゃったってことで、ご勘弁のほどを。
願わくば、彼女がもっと思うままに活動でくる状況になりますように。
俺も協力惜しまないぜ!って何すんだよ。
では引き続き、さねよしいさ子ライヴ参考盤紹介でお楽しみ下さい!

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