NHK教育「電脳コイル」第26話を見ました。冒頭から最後の一瞬まで、美しくまとめあげられた素晴らしい最終回。これでこころおきなく傑作と呼ぶことができます。
オープニングはなく、いきなり本編へ。4423という空間の存在する理由、オジジ(ヤサコの祖父)の死の理由などが明かされ、最終回にして遂にオジジの顔が描かれます。そして、デンスケに首輪と鍵が付いていた理由も。オジジ、そしてデンスケとの別れの場面は最終回の最初のハイライトです。ヤサコのボディガードの役目を終えたデンスケの首輪に付いていたのは、鍵から鈴になっていました。オジジの腕の数珠の鈴でしょうか。
感動的なシーンがある一方で、ヤサコの父親の登場シーン前後などでユーモアも忘れないのは「電脳コイル」らしいです。ヤサコの父親の仕事の目的も明らかになり、コイルスとメガマスの関係には、731部隊とミドリ十字の関係もちらりと連想しました。そして、メガばあと猫目ソウスケの戦いから、猫目兄弟の決裂への流れは、ふたつめのハイライトです。最終回にもしっかりと「電脳コイル」ならではのアクション・シーン。
ミチコさんの正体がはっきりし、意を決して語るヤサコの髪が風に乱れたり、イサコの兄への思いの象徴である結んだ髪がほどけたりする演出も良かったです。イサコが兄と別れ、鳥居が並ぶ石段でヤサコとイサコが語り合う場面は最後のハイライトでした。そして、後日の各キャラクターたちが描かれ、ヤサコとハラケンがイリーガルやミチコさんを生んだ感情について会話する場面で、小学校6年生の夏は終わります。
最後に時間軸は、翌年の春へ。桜の花びらが舞い散る中でのイサコからの電話、ヤサコとイサコの距離感。そして最後にヤサコと京子が見るものは。泣ける、というレベルではなく実際に涙がこぼれ落ちてしまいました。
最終回は、時間と空間が大胆に交錯するなかで展開。猛スピードで伏線を回収しながら、「電脳コイル」という作品のテーマが、現実で他人と接しながら生きていく痛みとともに人間は成長するのだということを明示していました。それは、現実というリアルと、電脳メガネというヴァーチャルという単純な対立項を超え、作品中に幾度となく出てきた「痛み」の意味を解き明かすものです。僕はどうしてもアニメの評価軸が「新世紀エヴァンゲリオン」になってしまうのですが、その「Air/まごころを、君に」に通じるカタルシスを感じました。それも、「新世紀エヴァンゲリオン」のように破綻することなく、最後まで丁寧に組み立てられた工芸品のような美しさとともに。
「小心者の杖日記」で僕はふだんネタバレなど気にせずに書くのですが、実は今回は慎重にネタバレを避けながら書いています。それは、さっそく来週から始まる再放送をひとりでも多くの人に見てほしいからです。磯光雄による傑作「電脳コイル」の再放送は、12月8日(土曜日)18時30分からです。
追記:さらに、2008年1月1日17時からNHK教育で90分の「電脳コイル スペシャル」が放映されるそうです。
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