小心者の杖日記

2007年9月 3日

庵野秀明総監督「ヱヴァンゲリヲン 新劇場版:序」

 庵野秀明総監督「ヱヴァンゲリヲン 新劇場版:序」を観てきました。10年前に「新世紀エヴァンゲリオン 劇場版 THE END OF EVANGELION Air/まごころを、君に」を観たのと同じ映画館で。上映の前後になぜかThe Beach Boysの「Surf's Up」が流れていて、僕は狙い撃ちにされた気がしました。

 冒頭は、「新世紀エヴァンゲリオン 劇場版 THE END OF EVANGELION Air/まごころを、君に」のラストを連想させる赤い海。庵野秀明らしい趣味の悪さに、不覚にもいきなり反応してしまいました。

 ストーリーは基本的に、テレビ・シリーズの第壱話から第六話をまとめたもの。98分のうち、ヤシマ作戦が後半のメインとなっており、それまでの部分はかなり駆け足で展開されます。前半はテレビ・シリーズと同じ演出が使われている場面が多いのですが、そのことが逆にテレビ・シリーズの面白さを再認識させます。

 そして、第3新東京市のメカニックな部分や使徒などでの、新たな作画やCGの入魂ぶりに驚愕させられました。あと3本、このクオリティとテンションが維持できるのかと心配になったほどです。それほど映像の快楽を味わえる作品。声優陣も10年前と同じ声で健闘しています。

 一方で、碇シンジの精神的な葛藤などの心理描写はわかりやすくなっており、葛城ミサトと赤木リツコのバーでの会話などで、説明的になっている印象さえ受けました。ヤシマ作戦の前に鈴原トウジと相田ケンスケから応援メッセージが届いているという友情の表現はベタすぎて、脚本面での今後の不安材料でもあります。あの名シーン「笑えばいいと思うよ」の後に、碇シンジと綾波レイが手を重ねる部分もトゥー・マッチに感じましたが、ここは判断が微妙なところです。

 そうした映像的な気持ち良さと心理描写の簡潔さを総合した結果、一気にエンターテイメント性が強くなっていると感じました。

 庵野秀明の個人的な苦悩を投影させたとも言われる「新世紀エヴァンゲリオン 劇場版 THE END OF EVANGELION Air/まごころを、君に」。その後、2002年に庵野秀明は安野モヨコと結婚しました(僕も彼らと同じ明治神宮で結婚しています、偶然ですが)。公開に先駆けて「緊急声明」として発表された「所信表明文」も、庵野秀明と安野モヨコが暮らす鎌倉から発せられたものです。そうした環境に身を置く彼が、今後「ヱヴァンゲリヲン 新劇場版」をどんな作品として制作し、「新世紀エヴァンゲリオン」を「前世紀版」として葬り去るか、素直に楽しみです。たぶん一筋縄ではいかないでしょうから。個人的には、碇シンジと惣流・アスカ・ラングレーがもうちょっとハッピーになって終わってくれると嬉しいです。「新世紀エヴァンゲリオン 劇場版 THE END OF EVANGELION Air/まごころを、君に」のラストの後味の悪さが、良くも悪くも10年経っても刺さったままなので。

 さて、エンディング・ロールと宇多田ヒカルの「Beautiful World」が流れた後は、なんと「ヱヴァンゲリヲン 新劇場版:破」の予告編が用意されていました。テレビ・シリーズと同様に葛城ミサトが「サービス、サービス!」と言うのに苦笑い。こういう余計なユーモアも庵野秀明らしいです。

 観終わって周囲を見ると、曜日と時間帯の関係もあるのか、10代などの若者が圧倒的に多いことに驚きました。「ヱヴァンゲリヲン 新劇場版」はすっかりユース・カルチャーなのだなぁ。そう考えつつ、映画館を後にしました。


エヴァンゲリヲン新劇場版:序

投稿者 munekata : 2007年09月03日
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コメント

>都市色さん
おお、観てこられましたか!
メインストリームにのしあがった、というのは感じますね。僕が見たときも劇場は若者ばかりでしたし、一方でパチンコから入った年齢層の高い人も観るでしょうし。
「surf's up」はたぶん映画館の人の確信犯的な演出だと思います。そうじゃなきゃ流れませんよね。内面面を描くという意味では、「surf's up」と前世紀版エヴァの終盤はつながるものがありますね。

投稿者 munekata : 2007年9月25日 21:56

こんばんは。
日記にも書きましたが映画を観てきました。
映画はとっても良かったですね。
カウンターカルチャーからメインストリームへのし上がった王者の風格が感じられました。
ホント映画館には若い子達が多かったですね土曜日だったし。同世代の方もいましたが。
残念ながら僕が観た映画館では「surf's up」は流れませんでした。
宗像さんが観られた映画館のスタッフの粋な演出でしょうか?
そう云われてみると、何となく「surf's up」のジャケがヱヴァ風に感じられてきました。

投稿者 都市色 : 2007年9月24日 21:39

>ハイムさん
こちらこそいつもTwitterではどうも! ブログも拝読しています。
なんだか「エヴァ」は、僕たちリアルタイム世代の思い入れをすっかり超越した作品になっていて、今「ヱヴァ」を見ている若者には現在進行形のリアルな作品として映っているのだろうな……とも感じました。

投稿者 munekata : 2007年9月 5日 02:03

こちらでは初めまして、Twitterではお世話になっております。

宗像さんが書かれている通り、12年前からのファンでは無いであろう、10代の若い人が多いも印象的でした。
初日の新宿ミラノ1に朝から並んでいたのですが、その時もやはり若い人が多かったです。
口コミ、インターネット等で、確実に新しいファンも発掘している感じがして、良いスタートを切ったみたいですね。

投稿者 ハイム : 2007年9月 4日 19:15
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