小心者の杖日記

2007年5月17日

オムニバス「細野晴臣トリビュートアルバム -Tribute to Haruomi Hosono-」

 オムニバス「細野晴臣トリビュートアルバム -Tribute to Haruomi Hosono-」→amazon.co.jp)は、坂本龍一が主宰するcommmonsからリリースされた細野晴臣のトリビュート・アルバム。これ以上ない強力なメンツが集合している一方で、意外と若手も参加していて新鮮さがあり、人選のバランス感覚は評価したいです。

 DISC 1は、細野晴臣の1973年のデモ音源「ろっかばいまいべいびい- Piano Demo ver.-」で幕開け。いきなりご本尊の登場です。Van Dyke Parksの「イエロー・マジック・カーニバル」は、中華風味と汎カリブ海テイストが混ざった不思議な味わいが彼ならでは。日本語で歌えないぶん、スキャットで乗り切っているのも一興です。坂本龍一+嶺川貴子の「風の谷のナウシカ」では、 嶺川貴子が同曲に再挑戦。フォークトロニカに笙の響きを混ぜたサウンド・アプローチは、決して声量のあるタイプではない嶺川貴子のボーカルの個性をうまく活かしています。「わがままな片想い」を歌うコシミハルは依然としてあのキュートな歌声。どうアレンジするのだろうとリリース前から気になったLITTLE CREATURESの「ハイスクール・ララバイ」は、最近の彼らの作品にもつながるオーガニックでスロウなサウンドに。直球勝負で「ハイスクール・ララバイ」の歌モノとしての魅力を浮き上がらせています。東京スカパラダイスオーケストラの「アブソリュート・エゴ・ダンス」はあまりヒネりのないスカでジャズ。高野寛+原田郁子の「終りの季節」は、冒頭を聴いた瞬間にエレクトロニカか……とちょっとしらけましたが、ふたりのボーカルが魅力的なので最後まで聴かせます。しかもコーラスがハナレグミ。miroqueの「Omukae De Gonsu」は凝ったサウンドですが、こういう宅録的なアレンジなら原曲のほうがもっとユーモアがあって良いかな。テイ・トウワ + ナチュラル・カラミティの「ハニー・ムーン」は、テイ・トウワの下手な歌をサウンドで塗り固めているようで、細野晴臣のボーカリストとしての魅力を再確認する結果に。口ロロの「北京ダック」は、参加ミュージシャンの人数が多いと思ったら、優雅なアレンジに乗せてみんなで合唱。アイデア勝ちですね。ワールドスタンダード+小池光子「三時の子守唄」は、ビューティフルハミングバードの小池光子の魅力的なボーカルと鈴木惣一朗によるアコースティックなサウンドでじっくりと聴かせます。手堅いです。

 DISC 2は、ヤノカミ(矢野顕子×レイ・ハラカミ) による「恋は桃色」でスタート。細野晴臣のカバーにかけては日本を代表する存在である矢野顕子と、レイ・ハラカミによる叙情エレクトロニカのタッグはやはり強力です。高橋幸宏は、細野晴臣の作品の中でも歌詞の情けなさではピカイチの「スポーツマン」をチョイス。フォークトロニカなサウンドに乗せて高橋幸宏が歌うと、この楽曲はまるで彼に書き下ろされた楽曲かと思うほど似合っています。畠山美由紀+林夕紀子+Bophanaによる「ミッドナイト・トレイン」は、このトリビュート盤の中では珍しくソウルフルなトラックです。再び坂本龍一が登板するのは、コーネリアス+坂本龍一の「Turn Turn」。これはもう音の間合いを聴かせるかのようなスリリングさに満ちたサウンドです。といぼっくすの「銀河鉄道の夜」は管弦楽器によるサウンド。Geoffrey Muldaur、John Sebastian、Garth Hudson、John SimonらによるThe Woodstock Vetsは「蝶々さん」を英語でカバー、余裕綽々で南部臭い心地良い演奏を聴かせます。ヴァガボンド+片寄明人の「ブラック・ピーナッツ」は、可愛らしいアレンジですがつかみどころがない感じ。たまきあや+谷口崇+ヤマサキテツヤによる「風をあつめて」は、主旋律をリコーダーで吹くなどアコースティックな演奏で、あまりのヒネりのなさに逆に驚きました。サケロックオールスターズ+寺尾紗穂による「日本の人」は、昭和を連想させるひなびた感じの演奏とボーカルが味わい深いです。途中で登場する寺尾紗穂の歌声も新鮮。Jim O'Rourke+カヒミ・カリィの「風来坊」は、スティール・パンを加えた美しいサウンドで、起伏のあるドラマチックなアレンジがさすがJim O'Rourke。終盤の緊張感が気持ちいいです。そして最後はまた細野晴臣が登場し、今度は2007年に録音された「Humming Blues −Demo ver.-」で終わります。

 全体的には、アコーステック編成で叙情性を浮き上がらせるタイプと、エレクトロニカが多いという印象。ちょっとこの両者に偏りすぎな気がします。前者の手法で一番成功しているのは、意外性も込みでLITTLE CREATURESの「ハイスクール・ララバイ」と、構成力が発揮されているJim O'Rourke+カヒミ・カリィの「風来坊」でしょう。

 そして、サウンドの先鋭性でしっかりと勝負しているのは、結局のところ坂本龍一+嶺川貴子の「風の谷のナウシカ」とコーネリアス+坂本龍一の「Turn Turn」で、ともに坂本龍一がらみだった気も。このあたりの不満は、2007年の晩夏から初秋にリリース予定という第2弾で解消してほしいところです。

 付け加えるなら、Van Dyke Parksの「イエロー・マジック・カーニバル」とThe Woodstock Vetsの「蝶々さん」は、変な気負いがない演奏が非常に良かったです。

 また、アート・ワークのキュートさも特筆しておきます。


オムニバス「細野晴臣トリビュートアルバム -Tribute to Haruomi Hosono-」

[ CD ]
投稿者 munekata : 2007年05月17日
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コメント

>トロピカルさん
あーほんとだ、うっかり長文書いたので気づきませんでした! ありがとうございます。

投稿者 munekata : 2007年5月18日 04:18

口ロロは「北京ダック」ですな。

そーいえば、ミネコの「風の谷のナウシカ」は2度目か。
これ読むまで、すっかり忘れてましたよ。

投稿者 トロピカル : 2007年5月17日 04:43
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