「文藝」2006年冬季号(→amazon.co.jp)は、「芥川賞受賞第一作」と銘打たれた綿矢りさの新作「夢を与える」を掲載しています。
相変わらず磨き上げられた日本語表現が続くので、読みはじめたときには息が詰まりそうになりました。なんとなく感じてそのまま忘れ去ってしまうような日常の感覚をすくいあげる手腕も変わらず冴えています。
そして物語がどこへ向かうのかと思いつつ読み進むと、これまでキャンパスを中心にしてきた綿矢りさの作品の舞台は遂にそこを出て芸能界へと場を移します。そして読んでいる途中で予感したように、これまでになく通俗的な展開を見せることになりました。しかし、芥川賞受賞後の綿矢りさ自身の環境も投影したと思われるこの大胆な飛翔ぶりは、賞賛に値するでしょう。
また、獲得と喪失、男女の関係、母娘の関係など、様々なテーマが重層的に入り組んでいる点でも、従来の綿矢りさの作品とは違った重みを感じさせます。
綿矢りさの「夢を与える」は、より踏みこんだ表現へと向かう彼女の姿を明確にし、新鮮な驚きをもたらしてくれました。
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