インターネットは人の幸不幸を左右するものというよりは、最初から幸せになれる資質の人はより幸せにして、不幸になる資質の人はより不幸にする、いわば加速装置のようなものだと思います。離れていた人と人を繋ぎあわせ、コミュニケーションの密度を上げ、その結果をより早く、より大きな形で表出する。そんな光景をこの10年で何度も見てきました。
森健「インターネットは『僕ら』を幸せにしたか?」(→amazon.co.jp)は、タイトルには「インターネット」を冠しており、実際にメール、検索エンジン、ブログなどについても触れていますが、もっとも多くのページを割いて言及しているのは、ICタグ、ICカード、監視カメラ、バイオメトリクスなどを用いた広い意味でのネットワークについてです。その点でタイトルと内容には若干の違和感を持ちました。しかし、かつて想像されていたような権力による監視社会といった単純な図式ではなく、現在では企業や市民の要望による監視社会が形成されつつあると指摘する内容は非常に説得力があります。
また、それ以上に興味深かったのは、民主主義的であると言われるインターネットの言論が、スモールワールドやパーソナリゼーションによって生み出されるサイバーカスケードにより、扇動的で衆愚的なものになりうることについての指摘でした。その可能性は、現在のインターネットの状況を眺めていても否定できないものがります。
インターネットにしろネットワークにしろ、それはあくまで触媒であって、結局のところ人間の幸不幸を左右するのは人間自身にほかならない。そんなことを改めて考えさせられた本でした。
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