豊田正義「消された一家―北九州・連続監禁殺人事件」(→amazon.co.jp)は、計7人の犠牲者を出した監禁殺人事件を追ったノンフィクション。松永太が通電などの暴力を駆使することによって、妻である緒方純子の家族を監禁し、妻が夫の、夫が妻の、子供が親の殺害や死体の解体に関わるように追いこんでいった異常な事件の過程が描かれています。
繰り返される通電によって正常な思考能力を失い、松永の操るままにされていく緒方家の人々。彼らはやがて家族の中でも争うようになり、その結果次々と殺されていきます。松永につけこまれる隙が緒方家にあったとも言えますが、その程度の問題はどこの家庭にもあると思われるだけに、よりこの事件は恐ろしく感じられるのです。
DVについての著書「DV - 殴らずにはいられない男たち」(→amazon.co.jp)もある豊田正義は、松永が抑圧者であり、緒方が被抑圧者であるという支配関係に着目し、両被告への死刑判決にそうした観点がないことを指摘します。そして、緒方がしだいに人間性を取り戻し、極刑も覚悟の上で供述を始めたのに対して、まったく反省の色を見せない松永の内面が見えてこないとも述べるのです。
子供から老人まで、人間を極限状態に置いて弄び、次々と殺していった異常な犯罪。その概要を把握できる本です。
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