baritonesax1207

母がパートに出かけた後にベッドから起きてパソコンの電源を入れて軽くインターネットしたらご飯を食べてあとはバイトまでずっとインターネットをする。という生活だったころ、その日も母が家を出た音を聞いてからベットから起きてパソコンの電源を入れてブラウザを起動してホームページのヤフーが表示されるのを待った。「愛知県ストーカー殺人」みたいなニュースを愛知県だからという理由で開いた。ニュースの住所は私の住んでいる町で事件の起こった場所は私がよく知っているところで被害者の女の子は私と同じ年でそしてその子の名前は私が聞いたことある名前だった。
驚きすぎてリビングのテレビをつけると私の知っているところがテレビで映っていてワイプに私の友達の顔が出ていて、そのVTRが終わるとオヅラがしたり顔でコメントしていた。チャンネルをまわすとほかの番組もそのニュースを報道していた。私は友達の訃報をヤフートップニュースで知った。

 バラバラになっても痛みは感じない

パートから帰ってきた母もパート先で聞かれたらしく(朝はNHKにしているので事件を知らずに家を出ていた)、同じように驚いてそしていろいろと聞いてきてくれた。通夜は今日夕方から友達の家の近くの公民館で、告別式は明日の午前中。会場はなんというか、まあ田舎は基本的に車がないと不便なところで、免許を持っているだけの私のために車を出せる友達と通夜に行く段取りまで母がつけてくれた。

 君のこと知らない
 みんなが君を見る
 君のこと知らない
 朝がニュース伝える

ワイドショーの内容がループし始めたところで私はテレビを見るのをやめてつけっぱなしのパソコンでインターネットをした。そのころニュースを見た当時の恋人が住所と被害者の年齢を見て心配して電話をかけてきてくれた。いろいろとぐちゃぐちゃした考えだったのでなにかいろいろと言ってしまったんだけど、「でも殺されてもしかたがないよね」と言われてぴたりと止まった。

 僕と 君と みんなで想う
 とても とても むずかしい愛

その場所は新しくできたばかりの建物でこけら落としのような通夜だった。私はその日バイトがあってどうにも代わってもらえずにまだ準備している最中なのに強引に記帳した。私は親族が少なくてこのときまで通夜・告別式にはでたことがなかった。喪服ももっていないし香典袋だってお母さんに用意してもらって、そして初めての通夜はまだお坊さんも来ていない準備の時間!本当に本当に私には社会性がないなと思ったけれど彼女が死んだことは本当だった。




で、こういうときのバイトは暇なもので私はずっとワイドショーで流れていた通夜の様子を見ていた。さっきまでいた場所をテレビで見ているのはとても不思議な気持ちがしたのだけれど朝のようなヒロイックな感傷はなかった。私は絶対にこのことを忘れないけれど、このことは誰かにとっては意味のないことなんだろうと思って私は黙った。
年月がたって私こんな可哀想な出来事があったんですと同情をひくことをするようになる程度には言えるようになった。でもそれはあのときのぐちゃぐちゃな気持ちの再構成ではなくて、別の気持ちからだった。 岡崎京子の「チワワちゃん」の最後、かわいいかわいい男の子のロマンチシズムを鼻で笑っちゃうこと。

 君なんて知らないのに
 僕は君を想ってる
 君を想ってる

想ってくれなくていい。
クラウドのすみにこっそりと置かれた思い出を、たとえその意味も価値もなにも理解されていなくても、その思い出が遍在しているに意味がある。