baritonesax1102

劣化まゆゆと半分浮浪者

 銀座線で浅草から渋谷に帰ろうと電車に乗って発車を待っていたら、劣化したまゆゆという感じの女の子が乗ってきた。浅草でこういうギャルロリっぽい感じは珍しくて一緒にいた夫も覚えていたくらい浮いていた。
 列車が動き出してしばらくして、CDが10枚くらい入ったビニール袋とウイスキーの瓶とさらにCDを持った半分浮浪者が乗ってきた。半分っていうのは挙動が浮浪者的なんだけど身なりが整っているから国会図書館はまだ入館できそうとかそういう感じ。
 その半分浮浪者は電車に乗ってきた時点で千鳥足だしそもそもその酒瓶からウイスキーを直に飲んでるし、うわーやばいかなーでもここ最後尾だからいざとなればすぐ車掌呼べるからいいや、でも近くに来るなと思っていたら劣化まゆゆの隣に座った。
 劣化まゆゆは席を移動しなかったんだけど半分浮浪者が手に持ってたCD(クラシック)を一枚劣化まゆゆに「あげるよ」と言って差し出した。私は劣化まゆゆが無視するんじゃないかと思っていたけど、受け取って表裏見まわしてから半分浮浪者に
「これ盗品でしょ?」
 と言った。半分浮浪者が「ちがうよー」とか言っているけど劣化まゆゆは「だってほらタグついたまんまだよ?」と言って半分浮浪者にそのCDを返そうとした。半分浮浪者は「渋谷のタワレコでいっぱいうってたんだよー。千円だったんだよー。あげるよー。」とおしつけている。すると劣化まゆゆが、
「でもタグついたまんまだから盗品でしょ。だめだよ。返してきなよ。」
 と呆れるわけでもなくうざがるわけでもなく、そう思ったのでそう言ったという風に言った。
 私もそしてたぶん半分浮浪者もなんかすごくいい気持ちになったので、半分浮浪者はどうしてもそのCDを劣化まゆゆにあげたくなったし、さらには自分の直飲みのウイスキーまで飲みな飲みなと勧めだした。
「えーそれホントのお酒じゃん。だめだよ、酒飲みすぎだよ。」
「これは大丈夫なお酒なんだよー。」
「でもそのまま飲んじゃ飲みすぎだよ」
「美味しいから大丈夫だよー」

 半分浮浪者の降りる駅のようで「そのCDいいからあげるあげる」と言って降りて行った。劣化まゆゆは表参道で降りて行ったんだけどそのCDはちゃんと劣化まゆゆが持って行ったようで座席にはなかった。
なんていうかもう劣化まゆゆすごくいいやつだなと思って、本当に良い気持ちになれた。たぶん同乗していた他の人もそう感じたんじゃないかと思った。


2011年02月05日、連合赤軍指導者永田洋子が東京拘置所で死亡した。
毎日新聞の石川淳一は「かつての最高幹部の死は一つの時代の終わりを告げた。」と記事を書いたが、この亡霊をどれだけの人間が覚えていたのだろうか。時代はとっくに終わっていた。それはきっとシャンパンタワーからこぼれたドンペリを絨毯が吸っていたときに、昭和天皇が死んだときに、携帯電話が0円になった時に、遠くの国の革命をustの中継で見ているときに。

その二日前に山本直樹の文化庁メディア芸術祭賞 優秀賞受賞記念パーティーがフーターズで行われた。チャンネーのパイオツ見ながら40年前の話で酒飲んでいる元連合赤軍兵士たちは資本主義と民主主義に適応して日本で暮らしている。時代は彼らの思い出になって漫画化されて国から賞をもらった。

そして今、東京拘置所には坂口弘が死刑囚として収監されている。彼の死刑は執行されないであろう。そして千葉刑務所にいる吉野雅邦も模範囚であるにも関わらず仮出所は認められず服役中だ。彼らの時代は40年前から時を進められずにいる。

そして坂東國男は死んでしまったのだろうか、エジプトで革命を起こそうとしていたりするのだろうか。日本は恋しいんだろうか。彼は今どこを生きているんだろうか。