baritonesax1006

「ポニーテールとシュシュ」のPV冒頭、更衣室でAKBのメンバーが着替えてるところに犬がきちゃってわー!ってなったあとてっきりその犬が未知のウイルス持っててみんなが感染しちゃってゾンビみたいにふらふら歩いて人を殺してまわる。みたいなリルカ学園みたいな展開になるかと思ったら違って残念だった。

 ウイルスに感染したAKBのメンバーは1時間ほどで全員ステーシーとなった。紫色の鱗粉が浮き上がりキラキラとオーラのように全身を包んでいた。
 君が走る僕が走る砂の上。でもステーシーたちは走ることができない。一度死んだ筋肉がそれぞれ勝手に動き出して歩いているように見えているだけだ。

 再殺部隊として派遣されたものはみなAKBオタだった。倍率は今までのどのライブ、どのイベント、どのグッズよりも高く、オタはこぞって再殺を志願した。口では「麻里子様だけにつらい想いはさせない。僕も一緒にいくから」とか言ってはいたが選ばれた者たちは現場について、ヨダレを垂らし舌を娼婦のように上下に動かす姿を直視できなかった。喉を通る空気の振るえるブルォォォルォォォォという音に耳をふさいだ。

 本当に愛するもののキスでステーシーは元に戻るというデマが流布していた。我先にそれを実行しようとしたピンチケは前田敦子を見つけ、そっと抱き寄せ口付けをしようとした。前田敦子の眼球がぐるりと回って ―ピンチケは目を閉じていたからそれに気付かなかった― そしてピンチケの唇を噛み千切った。悲鳴とともに逆上して、支給された小型拳銃で頭を真っ赤なトマトにし、それでもおさまらず頭をそっくり肉片にして体から吹き飛ばした。
「なんだよ、なにするんだよ。あっちゃんのためを思ってやったのに、畜生!痛い!痛い!痛い痛い!なにしやがるんだよ、このバケモノ!俺にこんなめにあわせるなよ!血がとまらない血が止まらない!痛い!このアバズレが!」
 そんなピンチケを誰も責めなかった。みなが拳銃を手にして、泣きながら発砲していた。

 再殺部隊には山ちゃんもいた。彼は泣いていた。
「ごめんね、ごめんねまゆゆ。まゆゆにこんなひどいことしてごめんね。僕はまゆゆが死ぬほど好きだよ。本当に大好きだよ。まゆゆのためならなんでもできるよ。でもでも恐いんだよ。まゆゆが」
タタタッタタタッタタタッタタタッ
「死にたくないんだよ。まゆゆのことが好きなことと自分が食いちぎられてすごくすごく痛い状態で死ぬことととまゆゆが好きなことは別なんだよ。」
タタタッタタタッタタタッタタタッ
「まゆゆは僕を苦しめて楽しいの?僕を痛めつけて楽しいの?お願いだからやめて。僕がまゆゆのこと好きだからやめて。ねぇいつもみたいに笑ってよ。そんなヨダレなんてたらさないで。まゆゆはそんな歩き方しなかったよね、まゆゆはそんな」
タタタッタタタッタタタッタタタッ
「畜生!なんでこっちばっかりにくるんだよ!どっかいけよ!俺のこと見向きもしないくせにこういうときだけ俺のところに来るな!俺にまゆゆを殺させてまゆゆはそれで満足なの?まゆゆ死にたいの?」
タタタッタタタッタタタッタタタッ
「まゆゆ?まゆゆ?今キャーって言った?悲鳴を上げた?ごめんね、まゆゆごめんね。もうすぐで楽になるからね。もすうぐ165の肉片にするからね。要領が悪くてごめんよ。まゆゆ本当にゴメン。てめー!なに足にからみついてるんだよ。どこなんだよ、もう手でも足でもねえじゃねえか離れろよ!」
タタタッタタタッタタタッタタタッ
タタタッタタタッタタタッタタタッ

タタタッタタタッタタタッタタタッ



 辺りは静かになった。そして誰もいなくなった。





みたいなPVだったらよかったのに。夏だし。