baritonesax1004



 会社に戻ってから食べようと思って買ったご飯だったが、漫画のように腹が鳴ったので目の前の公園で食べてしまうことにした。春なので天気も良かった。
 食べたら食べたでちょっと気持ちよくなってしまってベンチに横になった。

 ベンチは浅い背もたれのついた、直方体のものが置かれているだけというものだったので完全な仰向け状態で空を見ていた。子供もいない殺伐とした公園に4、5人の女の子がワイワイと入ってきた。
 顔だけそちらに向けて、そのワイワイした集団を眺めていた。女の子達はなんていうか良い感じじゃないなぁと思った矢先、青いワンピースを着た女の子が突き飛ばされた。両手をつかまれ万歳をさせられるようにして羽交い絞めにされた。
 その青いワンピースの女の子が「あっ」っと悲鳴を上げようとするより前に、周り女の子たちはスカートをめくりあげ、持っていたロープでめくりあげたスカートの裾と手と一緒にグルグル巻きにしてフェンスに縛り付けた。

 パンツ丸出しで玉ねぎのようになった女の子に向かって「じゃーねー」とボス格の細い目の子が鞄を投げつけてそのまま逃げていった。
 すぐに助けなければと思ったがなにせ向こうは完全にパンツ丸出しで立っているのである。ロープを解いてスカートを戻してあげて、
「大丈夫でしたか?お嬢さん?」
「はい。とても助かりました。ありがとうございます。それでは失礼いたします。さようなら。」
 なんて丸く収まるだろうか。なんとか自力でどうにするか、子連れのお母さんなんかが来て助けたりしてくれないかと思い様子を見ていた。

   フェンスにくくりつけられているせいでしゃがんで下半身を隠すこともできず内股でもじもじしながら、体を揺らしてロープから抜け出そうとしている。ガシャン、ガシャンとフェンスの揺れる音と一緒に女の子のうめき声が聞こえてくるものの助けが来る気配はない。

 暴れていたおかげというべきが繋いでいたロープがゆるんだようで、女の子は自由になった両手でめくり上げられたスカートを戻した。

 女の子は息が荒く、肩が上下していた。俯きながらスカートの裾を片手でしっかりと押さえ、もう片方の手でしきりに髪をなでていた。髪は前髪なんかがくしゃくしゃとしていたが、それ以外はゆるやかなウェーブが今風の普通の髪型だった。
 化粧で塗りたくっていたものが涙で湿らされて頬に変な模様を作っていたからから、あるいは緊張と敗北感で顔の筋肉が無意識に動いてしまっているのか。怯えとか怒りとか悔しさとか恥ずかしさとかで可愛いだろう彼女の顔は真っ赤で、ひどく引き攣っていた。
 口からは「うー、うー」とうめき声がときどき漏れてきて一生懸命整えてる前髪も逆にかきむしっている様にも見え、その雰囲気は狂人のようだった。目の端に涙は見えるが泣いてはいなかった。

 整えた前髪は汗で額に張り付いて、首筋にもうっすらと汗をかいている。ときどきゴクリと唾を飲む。
 口の端は口紅の色なのか可愛いピンク色をしているが、唇の一番ふっくらとしている部分は肉の色だ。その肉の色がいろいろな体液でぬらぬらと光っている。
 そのぬらぬら光る下唇を歯で噛んでいる。きつく噛みしめていて血が出てしまいそうだった。
 ずっと俯いているものだから鎖骨のあたりに涙や鼻水やらなにやら液体がたまってワンピースに新しいしみを作っている。

 再び目が潤んで眼球全体を覆い、滲んで溢れて頬を伝った。子供のように手の甲で拭うもののあとからあとから涙が溢れてきた。泣き叫ぶことはなかったが、我慢してもしきれない声が漏れてくる。
 気持ちを落ち着けようとしているのか、深呼吸よしようとしているが泣くことが止められず余計に息が乱れている。耳まで真っ赤だ。右耳にピアスがない。外れて落ちてしまったんだろう。なんどもしゃくりあげて、手の甲で涙を拭い、深呼吸しようと深く息を吸っている。
 片手はどうしてもスカートの裾から離せないでいるようだ。玉ねぎになっていた内側で泣いていたのだろう、スカートにも水のしみが出来ている。濡れるとよく解る布地だった。
 鋭く整った爪が涙を拭うのと一緒に頬をひっかいて赤い筋を作った。

 マスカラがますます流れて涙が黒い雨のようだった。手の甲で涙をぬぐっていた女の子もそのことに気がついて指で目の輪郭をなぞるように、妙齢の女性がよくやるようにふき取ろうとしている。血走った目の周りをどうにかしようと指先で何度も何度もなぞっている。手探りで投げつけられた鞄から鏡とハンカチを取り出し目頭にハンカチをつっこんでいた。汗でぐちゃぐちゃに張り付いている前髪よりもぬらぬら光っている口元や首筋よりも血走った目両目よりも目の周りだけを鏡で覗き込んでいた。


 急に首を振り出した。それが周りを見渡すためなのかどうか解らないほど早い動きだったので隠れるのが遅れてしまった。が見えていなかったのかほっと一息ついて、そのまま彼女は他の女の子たちと同じ方向に去っていった。
 俺は会社に戻って仕事をして、少し残業をして帰った。





「昨日私、三回もイっちゃった!」「えー、かしゆかそれヤりすぎ!!どんだけ好きなの?」「えー三回しただけだよ?」「うっそ、それ超相性いいじゃん。のっちでもそんなこと滅多にないよ!」「相手はいつもの人だけどね?でも昨日はほんとよかった!なんだろライブ前っていうのがよかった感じ?」「あ〜わかる!」「ライブ前で強引に予定合わせてまでするってこと今までしなかったからな〜」「ライブ終わったら終わったで解放感!っていうか盛り上がることもあるよ?」「結局どっち派なん?」「したいとき派!」「(笑)あ〜ちゃんはどっち?前?後?」「う、うん」と返事したものの(え、みんなそんなセックスで感じたり、イクものなの?私一回もイったことない……。私おかしいのかな?)と不安に思ったあ〜ちゃんが家に帰ってパソコンで「のっち イク」で検索してこの文章を読んでいたらと思うと言葉に出来ない快感が身を包む程度にはPerfumeのことが好き。